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2007年 04月 23日
KieranTimberlake Associates のレクチャー
月曜。
KieranTimberlake AssociatesのStephen Kieran のレクチャーを見に、仕事のあとUWへ。
ちょうど日本の’新建築’のような位置づけのアメリカの建築雑誌Architectural Recordの最新号に
彼らの住宅が出ていたので、興味を持って見に行きました。

軽く彼の紹介。
イェール大のあと、ペンシルヴァニア大でマスターを取得。現在も事務所を率いながら
ペン大で教えています。

Kieran と Timberlakeの二人は、あるとき、
書くことも止め、
コンペもやめて、
ただ実際のものを建てることのみに集中することを決め、
それを18年続けたそうです。
そしてある程度の手ごたえを得た後、Manual(2002)という本にまとめ、
再び書くことやらを始めたとか。
その後、refabricating Architecture(2004)という本も出しています。

今回の彼のレクチャーで面白かったところ、気になったところを書いていきます。

まず、最初に示した4つのポイントは、

・Productivity
・Quality
・Environment
・Art

です。
ほかの建築家との大きな違いは、Productivity(生産性)に堂々と言及している
ところでしょう。

例えば、過去数十年だったか100年だったかで、
ほかの工業製品は80%も生産性が上がった一方、
建設業では20%下がっているとデータを見せられました。

そこで、自動車産業を引き合いに出して、部品の種類を減らして接続部を減らす
ということを彼らは実践しようとします。

しかし、このとき、バナキュラー、敷地、素材、芸術なども意識します。
生産性を上げながらも、自然の中で自然の一部のような建築を目指します。

彼ははっきりとこう言いました。
「ミースはやりたくない」

そしてそれらの考えを現在できうる最大限の形で実現したのが、
彼の自邸でもあるLoblolly House
でした。

作り方はこうです。

まず3D CADを用いて、接合部や素材のサイズなど全てを検討する。
それをもとに自分のスタジオにある作業場でモックアップを作りさらに検討する。
部材や新素材などについてのリサーチもかなり行い、優れたものは遠く離れた場所(例えばドイツ)からでも輸送して用いる。
(ローカルなものは必ずしも質が高いものばかりではなく、それなら遠くても質の高いものを使ったほうが、
維持の面でプラスということらしい。またアメリカの住宅は50~90年持つのに、平均32年で建替えられて
いるらしいです。)
工場であらかじめ組み立てられたパーツを敷地に運んで短期間で建設する。
など

以前シアトルのプレファブ建築家Anderson Andersonのレクチャーでは、
その’プレファブさ’が表現として前面に出ていてやや違和感を感じたのですが、
KieranTimberlakeの場合は、表現としてのプレファブではなく、もっとドライに’手段としての’プレファブであり、
外観には4つのポイントの一つArtを取り入れることで、プレファブの硬さを感じさせない。
きちんと敷地を読み込んでからつくっている。
だから、どこでも同じものが置かれる、というプレファブ建築の考えとは違っている。

例えば、この住宅に見られる特徴的なデザインのファサードは、周囲の森の写真をもとにつくられているという。
(SANAAの小笠原美術館のガラスのセラミックプリントは拡大すると似ていたと思う)

またこの住宅の動線は垂直に移動するシークエンスをつくっており、生活のなかで、
周辺の森を感じられるようになっている。

森を通って車でピロティに駐車(ピロティにしたのは湿地帯に近いのと敷地への影響を抑えるためらしい)
木々のメタファの柱を抜けて低木の間の飛び石を抜けてまたメタファの柱を抜けて階段を登る
階段から周辺の森が再び視点を変えながら見える
室内へはいる。奥の部屋に行くときにはブリッジを渡り両サイドの森を目にする

というかんじ。

生産性や質の向上のためにプレファブを手段として取り入れているという印象。
でも同時に環境との関係や美しさなども獲得しようとしている。
個人的には作品の印象が三分一博さんに似ているかなーっとちょっと思いました。

また、これまでプレゼンのための3Dだったものが、
建設のための3Dになってきているという印象をまた強くしました。
そのため、これまで曖昧に表現していた部分を厳密に3Dで描く必要が出てくる。
ということは、3Dを描く段階で、大工さんのような施工の知識も求められるということ。
でも、そこさえちゃんとおさえておけば、部材のデータはパソコンから工場の機械へと
そのまま送られて寸分の狂いもなく出来てくるということらしい。
しかも、このような一連のプロセスが、少しの投資で個人で全て出来てしまう状況になっているとか。
彼らの事務所では、ふつうの建築事務所のようなオフィスとともに、
このような工場のようなショップと呼ばれる作業場を持っていて、
部材をつくったりしているそうです。



彼が最後に語った言葉

「今ほど建築家になるのにすばらしい時代はない」

これは、環境の問題に関して、大きな意義のある仕事ができるから、ということらしいです。
またそのための便利な技術革新も進んでいるということでしょう。
バブルの時代に建築家になるのがいいのか、
今のような大儀がある時代に建築家になるのがいいのか、
背景にあるのはそういうことでしょうか。

また、彼の事務所はリサーチ部門に力を入れているらしく、
それはOMAとかAMOのような都市に関したものではなくて、
建築の素材とかエコ技術とかを目的としたもの。
リサーチはこれから建築の分野でもお金になる、みたいなことも言ってましたね。

# by ogawa_audl | 2007-04-23 14:12
2007年 04月 15日
凛とした
土曜。
久しぶりにかなり寝て、というか寝すぎて気づいたら夕方。

近所のメキシカン料理の小さな店で、
ポークタコスを
かなり遅い朝飯のような
遅い昼飯のような
早い夕食のような存在として食べる。

バスの時間まで、バス停横の行きつけのベーカリーカフェで
アメリカーノと甘いもの。
五十嵐さんにいただいた本を読む。

バスでダウンタウンへ向かう。
いつもながら丘を下りながら車窓からダウンタウンを眼下に見る。

ふむ、天気がよいな。
外は気持ちよさそうだな。
夕日が近いな。
スカルプチャー・パークも近かったな。
ああ・・

衝動的に途中下車。

久しぶりのスカルプチャーパーク。
オープンしてから2ヶ月以上経つが、
天気のいい週末はいつもにぎわっている。
子供、ねーちゃん、にーちゃん、おっさん、おばちゃん、おじいちゃん、おばあちゃん、
犬、自転車、ローラーブレード、スケボー、セグウェイ!?・・

みんなてくてく。
みんなほほ笑む。

オープンしたときにはまだ完成していなかった部分も
きれいに芝が張られて出来上がっていた。

空は青く、
海もそれを映して青く、
湾の向こうには
まだ雪をかぶったオリンピック山脈が見える。

太陽はあたたかく、
風はつめたい。

流れに乗ってどんどん歩く。

夕日が世界の色を変えていく。
目に映る景色は美しい。
体はぽかぽか。
顔はひんやり。

ああ気持ちええ。

’場所’を創り出すことを生業としている者として、
ときどきのこういう時間は大事。
いろいろリセットになる。
原点を思い出すこともできる。

そのまま海沿いを歩いてダウンタウンの会社へ
ちょびっと仕事しに行く。
左手にはスタバのコーヒー。耳にはipod。

海、山、湖、緑に囲まれた都市、シアトル。
また季節がやってきた。

# by ogawa_audl | 2007-04-15 13:39
2007年 04月 15日
休息日です
金曜、仕事のあと友人たちとご飯と軽く飲み。
その後、カフェでコーヒーのあとさらにビール一杯。
日が変わる前に、KさんとクラブにBTを見に行く。
BTはクラシックのエリート教育を経て、DJもやっているアメリカ人のアーティスト。
CDを聞くと、いろんな分野の音楽が彼の中で等価に扱われているのが感じられて面白い。
昨晩のショーでは、ダンス系の激しい曲をあえて選んでいたよう。
前座のほかのDJたちと比べると、音の質や迫力が違った。それがわかったのは収穫。
かなり眠くなった中、タクシーで帰宅。
木曜は残業して2時ごろ帰宅し金曜の朝は7時半から会社のデザインレビューがあったので
眠気は最高潮。

土曜の今朝起きたら、午後の3時半。自分ではかなり珍しいこと。
すでに部屋には西日が差し込んでいる。

# by ogawa_audl | 2007-04-15 08:01
2007年 04月 12日
にこめ 「Re: Underground」
コンペに出した2つのエントリーのうちのもう一方です。
にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0244178.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0245827.jpg


敷地はシアトルのダウンタウンの南、パイオニア・スクエアという歴史地区。
このエリアには実は隠れた地下世界があるのです。
かつてのシアトルのダウンタウンは、現在よりも1層分低い土地に住んでいました。
しかし、当時は、潮の干満で、下水が逆流したりという欠点も。
19世紀末に大火でシアトルの町が焼け焦げた後、
町の再建のなかで(このときごたごたはあったらしい)、
地上レベルを一層分上げることで、そういった問題を解決した。
現在でも当時の地下レベルは、多くが使われず廃墟のように地下に残っており、
部分的に歩道に埋められた紫色のガラスブロックを通して見ることができます。
またこの地下世界を見せるアンダーグランドツアーという観光も一部あります。

このような隠れた地下を積極的に使って、
今回のコンペの主旨の環境とかグリーンとかにからめた提案。

機能は、植物園、ギャラリー(敷地周辺はギャラリーが立ち並ぶアート街)、
建設中のライトレールの地下駅との接続、など。
地下と地上を使った立体的なパブリックスペース。
にこめ 「Re: Underground」_b0021501_044693.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0341583.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0342710.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0403912.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0344263.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0345973.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0351248.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0352726.jpg

にこめ 「Re: Underground」_b0021501_0353850.jpg

(計画立案:Kさん、Sさん、Tちゃん、私)
(製作:Kさん、Sさん)

# by ogawa_audl | 2007-04-12 00:36
2007年 04月 10日
すかんじなびあ
新しいプロジェクトが結構おもしろい。

シアトルからずっと西にある湾に面する人口1万数千人の町に計画される
新しい市庁舎兼コミュニティ施設のプロポーザル。
この町の特徴は、スカンジナビアのひとたちが多く住んでいてそれを
町のアイデンティティにしているというところ。バイキングの末裔たちです。
ということで、デザインもモダンな北欧のものが求められている。
また同時にこれから観光客も呼び込みたいとかあって、
ランドマーク的な要素も積極的に求められている。
ちょうどいいから、これを機に北欧の建築作品の勉強をしてみようかなと思ってます。

敷地も、潮が引いたら干潟になる小さな湾に面した斜面。
そこからはオリンピック山脈がきれいに見える。
文化的なこと、敷地のポテンシャル、
かなり面白いことが出来そう。

チームも実はばりばりデザインを支持しそうなひとがいない(それはそれで困ったものではある)。
チャーーーーーンス!!
まだプロポーザルなのでコンペみたいな状況。
コンペみたいなノリでプレゼンも含めてじゃんじゃんつくってしまおうかなと企んでます。
この規模のプロポではうちの会社ではやらないような濃ゆいプレゼンつくってしまおうか。
きれいなCGとかムービーとか。。おお夢がひろがる。

# by ogawa_audl | 2007-04-10 04:43