2008年 03月 13日
日本からアメリカに戻る移動の時間は 毎度のことながら、世界の中の日本について考えてしまう。 そして、それを見越したかのような空港の書店のラインナップにいつもひっかかる。 特に持ち運びに楽な文庫サイズに弱い。 ある意味典型的な顧客なのだろう。かもられっぱなし。 帰りは名古屋からサンフランシスコ経由でシアトルへ。 シアトルの空気はなぜかわからないけれど爽やかで頭がすーっとなる。 日本の公共空間は暖房効きすぎ。 その移動中に読んだ本。 ・3年で辞めた若者はどこへ行ったのか(城繁幸) ・私はこうして発想する(大前研一) どちらも、20世紀と今とこれからの日本における人材や国際関係について論じている。 「3年で~」のほうは、現在の日本の企業が持つ「昭和的価値観」に意義を唱えて、 新しい流れを提示している。 主に30代より下の若い世代と50代以上との世代間の対立を構図としている。 これから現実がやってくるリアルな世代と、 現状でなんとか逃げ切りを図ろうとするかつてはリアルだった世代。 昭和的価値観を持つ側が、既得権を守ろうとしてそのしわ寄せが若い世代にいっているということ。 安い単価で働かされる若い世代がその代表的なもので、それが少子化も助長している。 「若いうちは・・」なんていうものも、今後は通用しない。 なぜなら自分が50代になったときに現在の50代のような収入が得られる保障もないし、 日本の企業に同じ体制を維持するだけの体力はなくなってきている。 その辺を予想している若者は、外資へ流れる、という構図。 ますます日本の企業に人材が入ってこない、という状況へ。 少子高齢化による労働力の減少については、その一般的認識を疑い、 女性や高齢者による労働現場への参加によって労働力不足をカバーできるという論。 現在は、それをなかなか認めない企業の体質がある。特に女性に対して。 実は日本のマスコミも、そういった守られた既得権を持つ階層の集まりであるため、 その仕組みを変えようという社会の流れが起こったら、いっせいにこれをたたく。 全体的に、昭和的価値観という共通項でくくって、日本の国内問題を扱っているという印象。 「私はこうして~」のほうも近いものがあって、 マスメディアやこれまでの時代の流れによって既成概念となっていることを疑って、 事実に基づいて真実と未来への予測を伝えている。これすなわち発想法。 ビジネスにからめながら、これからの時代に必要な人材育成を説く。 (そしてマインドコントロールのように、自身が経営するビジネス大学院を宣伝・・確かに面白そうではあるが) でも、本当に伝えたいのは、これからの日本に対する危機感。とくに人材の面で。 労働力不足について、教育をほどこした上での移民で補うことを提唱しているのが、 「3年で~」との違い。時間がないという現実問題から来ているのもあると思う。 しかし、いくら労働力があっても、それを引っ張っていけるような優れた人材がなければ どうしようもない。 特に情報がボーダーレスで先進国と途上国の地域格差がなくなった現在では、 世界のあらゆる場所にいる若者たち全員と、せーの、で競争している状態。 すぐれた知があれば、なんとかなる、とアメリカを見ていて僕も思う。 ブッシュを安易に支持してしまうような人々があふれるアメリカでも国際的に競争していけるのは、 一部のエリート大学や地域に集まる天才たちによって 絶え間なく新たな知が生産され続けているからだと思う。 どちらの本も、日本の新聞やテレビを見ていて植えつけられてしまう考え方を疑って、 そうではない事実を教えている。 そして、日本の若者の力を信じ、それを延ばしていこうとする思想を感じる。 優れた若い人材は、さっさと条件のいい海外へ行きなさい、とは言っていないところに、 日本への愛情を感じる。 二人ともこれからの日本をなんとかしたいのである。 一方、自分の利益追求にばかり走っているように見える日本の大企業のトップは その辺ちゃんと考えているのかどうか疑問だ。 「3年で~」の著者は、現在の状況を、明治維新のころと重ねている。 自己の利益を超えて、国を引っ張っていく若者は出てくるか。 熱意も必要だけど、それができるような余裕も必要なのかもしれない。
by ogawa_audl
| 2008-03-13 13:25
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