人気ブログランキング | 話題のタグを見る
2008年 02月 03日
都市は戻ってくるか
前述の「内藤廣対談集」の中で、3人が「環境」というキーワードについて語っている部分に関して。

思想としての環境はプラスイメージにならない。(林)
環境の話は次の時代を主導していく思想にはならない。強烈なものを組み立てられるとは思えない。(香山)
あまり明るい話にならない。建築を引っ張っていくような強烈な概念になりにくい。(内藤)


林さんの発言は以前の彼の発言とか仕事のことを考えるとツッコミどころ満載なのですが、
それは置いておいて・・。
僕も日本で学んでいた頃の環境建築の印象からは同じように感じていたし、
アメリカでもLEEDで出来上がる多くの建築には今でも同じような印象を受ける。
正しいのはわかっていても、設備的な話が中心で、
これまでの建築と見た目や空間や使い方が大きく変わってはいない。
マイナーな変化であって、劇的な変化には見えない。

でも、ここ数年で環境建築のデザインは大きく変化してきたように見える。
欧米の建築家が見せる、環境を謳った新しいプロジェクトに、
これまでとはチョットちがった楽しさ、気持ちよさ、美しさが見えるようになってきたからだ。
僕が敢えて「イケイケの」という言葉をつけるのも、その辺の違いを出したいからでもある。

例えば、いくつかの事例を挙げると、
Public Administration Town in Korea (Balmori Associates / H Associate / Haeahn Architecture)
Beijing National Aquatics Center/Water Cube(PTW Architects / Arup)
High Line in New York (Diller, Scofidio + Renfro / Field Operations)
Hudson Yards Redevelopment Project in New York (Steven Holl 案)
Cité du Surf et de l’Océan in France (Steven Holl)
Zero Carbon City in Abu Dhabi (Foster and partners)
Taichung Gateway park in Taiwan(Stan Allen Architects)
GuangMing eco city in China (CJ Lim - studio 8)
Dongdaemun Design Plaza and Park Competition(Zaha Hadid, Steven Holl, FOA 他)

いわゆるエコ建築ではなくても、最近はデザインを売りにしたスター建築家の絵の中にも、
建築とからみついたような立体的な緑がよく出てくるようになったように思う。
ディラー・スコフィディオやスノヘッタに始まり、ザハもS.ホールもみんなランドスケープと建築が
一体となったようなものを打ち出すようになってきた。
(フォスターは建築単体でもエコテックを押し出している。)

同時に建築家と優れたランドスケープ事務所のコラボレーションも一般化してきているように見える。
また、ランドスケープのデザインがそのまま大規模な都市計画に現れるようになった。
(日本ではまだまだこういうタイプのランドスケープ事務所が少ないと思う)
これはここ数年の大きな変化だと思う。流行ともいえなくもない。
ほかにも、建築や都市のコンペのテーマにおいては、IT系とともに、環境系のものは増えている。

ランドスケープと建築との融合は、単に環境問題への意識の高まりだけではなく、
クールハースが斜めの床を提示したこと、3Dモデリングの技術の向上などの
いくつかの条件が重なって、その造形が生み出されてきているような気もする。

グローバリゼーション・市場経済の力が都市を形成していく現在においては、
クールハースのように都市を調査することは出来ても、
都市像をとりまとめ、それを描きだす力を建築家が持つのはほとんど不可能に近いように見える。

けれど、イケイケ環境都市の創造という理念では、
まとめ役となる「誰か」が再び都市を統合する力を持ち得るのではないか。
そのときに、建築家や都市計画家がその「誰か」になり得る可能性は十分にある。
今世紀に、再び建築家が新たな都市像を描く時が来るのではないか、と僕は感じている。
中国や中東で起こっているような異常な巨大都市化が残りの全ての途上国で起こるほどの
余裕は宇宙船地球号にはもうないのだから、同じやり方が続くとも思えないというのも理由でもある。

例えば、

建築とランスケの立体的融合によって、都市の中で野山を駆け巡る体験も普通になるかもしれない。

あるいは、夏暑過ぎる日本の都市上空に、
太陽光パネルがパラパラと集合した
一見すると雲のように見える「発電所」兼「日よけ」ができるかもしれない。
生産地と供給地が隣接しているから電力輸送上のロスも少なくて済む。
(でもこれはちょっとトンデルか)

by ogawa_audl | 2008-02-03 17:18


<< 緑の毛布をかぶる美術館たち      日本の建築界(70年代~現在) >>