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2005年 06月 22日
Jun 21 in New Haven
朝ホテルに付いている食事をとる。
bagel with creamcheese。最近毎朝これ食べてます。

ホテルが街の中心から少し離れた場所なので、公共交通機関もないらしく仕方なく
タクシーを呼ぶ。Yale University へ。

まずは地図がほしいなあと、うろうろしていたところ、本で見たことがある景色だと思ったら
YALE CENTER FOR BRITISH ART (Louis I. Kaln)
を発見。
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この建築は、カーンがNYのペンシルベニア駅で亡くなった後に竣工したものです。
(カーンの死後にそれを引き継いで完成させた中心人物のひとりが、春のスタジオの
講師だったアンソニーでした。)

まずはいつも通り、まわりを一周しながら写真を撮る。
そしてエントランスへ。ピロティ状になった少し薄暗いエントランスの奥に、
オレンジ色に光る内部空間がガラスのドア越しに見える。
内部へ入ると、高く明るい吹き抜けに驚き、つい見上げてしまう。
カーンの内部空間の光はいつも優しい。
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そこから奥に進もうとすると受付のおばちゃんに荷物を置いていくように止められる。
そこでちょっと話す。
建築学生だと言うと、見てたらわかると言われた。
いきなり床に座って天窓のスケッチ始めたり、壁に近づいて空調の納まりの写真
撮ったりしていたから、まあ変な動きではあっただろう。
カーンのデザインについて質問されたので、限られた知識と限られた英語で
なんとか伝えることに努めてみる。最初は怪訝な目で見られていたけれど、
すっかり打ち解けた。人間正直に話せば通じ合うものだ。
マップがほしいことを伝えると、yaleの地図をくれた。さらに、面白い建築はどこか
訪ねたら、隣に座っていたボランティアのおばあちゃんを紹介してくれた。
このおばあちゃんがまた良いひとで、大学の建物をめぐるツアーがあるから、と
わざわざ電話してその開始時間とか所要時間とかを聞いてくれた。
でも実は時間なくていけなかったのですが・・(おばあちゃん、ごめんね。)

階段室へ向かう手前は再び低い天井で薄暗い。
円筒状の階段室に入ると、今度は少し明るくなる。
そして2階へ。階段室を出ると再び暗い場所に出る。その先には先ほどの
吹き抜けから明るい光が差し込むのが見える。
円筒の反対側にはもうひとつの吹き抜け空間がある。
ここは最初のものよりも光が淡くやわらかく均一な印象。
その両サイドは図書室。
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3階4階は、絵画の修復か何かの関係で今回は入れませんでした。残念。
8月からは入れるそうです。

以下感想。

実はこの作品はUWの春に取ったスタジオの授業で教科書のように何度も
アンソニーの話に出てきたものでした。でもどうしても図面や写真からは
その良さがわからなかった。街に対して閉じた印象の外観や、黒っぽい’金属’のパネル、
エントランスのつくり方など、どうも自分のなかで納得できなかった。
でも訪れてみてそれら全てが解消されました。
やはりカーンの建築は実物を見ないとわからないタイプのものであるのは確かなようです。
今では大好きな建築のひとつになりました。それに今回も教えられることが多かった。
写真もついついたくさん撮ってしまう。撮りたくなる部分が多いということでしょうか。
ディテールは、きりりとしてシャープですが、内部空間はやわらかい印象を受けます。
ここがすごいところのひとつだと思います。
キンベルに比べると、こちらのほうが規模が大きいし、機能的(設備的)な面が多く導入されて
いるように思います。そのため、キンベルのほうがシンプルで光に包まれるような感覚がある。
一方、Britishはその分、光のコントラスト、光量の変化によって、ひとつの建築の中で異なる
場面を作り出しているように感じました。光の変化によるシークエンスの面白さがあります。

「金属パネル」
うすい黒っぽく表面はマットな感じ。ざらざら。思っていたよりもずっと落ち着いていて、
金属でありながら、むしろガラスの表面の滑らかさを際立たせる背景のようにも感じられた。
また、コンクリートとの相性もよかった。内部のオーク材もそうだし、キンベルなどで見られた
白いトラバーチンもそうだけど、カーンはコンクリートと相性良くなじむ素材がよくわかって
いたんだろうなあ、と想像できる。素材への観察力か、それとも愛。

「シンプルさと複雑さ(システムの中でシステムを崩す)」
プランを見ると、グリッドを用いていて一見単純に見える。でも実際の内部空間を体感
すると立体構成など結構複雑。それはディテールにも言えて、ここでも単純なグリッドや
システムとしてのデザインを崩している。だからスケッチをしていて予想しながら線を引くと
あれ?と裏切られてしまう。単純な繰り返しではない。だから写真もついついたくさん撮って
しまうのかもしれないなあ。

「カーンの窓」
キンベルでもリチャーズでも感じたのですが、窓のガラス表面がとてもフラットで
滑らかできれいです。また、薄く見えるように工夫されたサッシュがここでも
同様に見られました。
Britishで見ていて面白かったのが窓の形状。一見するとシステマティックな反復のように
感じますが、よく観察すると全体としては、位置も大きさも、バラバラなんです。
エレベーションをスケッチするとそれがよくわかります。
それをバラバラに感じさせないところがすごいところでもありますが。
この窓の形状、僕も疑問だったのですが、内部空間でその理由が判明。内部の機能から
決まっていたのですね。例えば机とか本棚とかの家具だったりします。

「光源としてのヴォイド」
キンベルで中庭が内部空間の光源として重要な機能を果たしていたように、Britishでも
天窓で覆われた吹き抜けが、内部空間へ光をもたらす重要な役割を果たしていたように
思います。どちらの建築も外から見ると、開口部が少ない閉じた印象を与えるのも共通
しているように感じます。

「バランス感覚」
デザインで重要なもののひとつに、どこでデザインをストップするか、というバランス感覚が
あると思います。作りこみすぎてもtoo muchとなってしまう。その辺がカーンは優れていた
のだと思います。エレメントを分割して、それぞれをシンプルにデザインする、ここまでは
多くのひとができると思うのですが、次にそれらを統合するためのバランス感覚。
ここが重要な気がします。


さて、次に訪れたのが
YALE UNIVERSITY ART GALLERY (Louis I. kahn)
こちらはカーンの初期の作品。Britishのほぼ向かいにあります。

が!

大規模な改築中で原型をとどめておらず・・ビニールシートで覆われている!
でも堂々と中へ入ってやりました。現場で働くおっちゃんに
「中に入ってもなにもないよ」
と言われたのですが、自分は建築を勉強していて建物が見たいのだと伝えると、
「おう、入れ入れ」
みたいな状態でした。
でも内部はいろいろなものが散乱しているしシートはかぶっているし、なにがなんだか・・。
とりあえずあの特徴的な天井を写真に収めて大人しく撤収。
まあ、貴重な体験といえばそう言えなくもないかな、とポジティブシンキング。
2006年の秋まで工事は続くそうです。
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次に道を挟んですぐ隣にある建築学部棟(Paul Rudolph)へ。
外観も内部も入り組んでいて、個人的には'nest'という印象。
使う側が発見しながら自分の住処としていく。
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内部では今年の学生の作品展が大々的に行われていました。
それぞれに個性があって面白い。シンプルなものからグニャ建築まで様々。
個々のレベルも高い。表現も様々。手描きあり、CGあり。
模型もすごい。模型の材料もさまざま。
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さて外に出ると、この建築棟の隣にはなんと
TROPICAL HOUSE (Jean Prouve)
が!しかもホンモノ!
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アフリカにあったものを、フランスに運んで、さらにそれが今、Yaleに来ているらしいです。
期間限定で。
こんなものが見られるなんて予想外のラッキーでした。内部には入れませんでしたが。

Britishの隣のイタリアンレストランで遅めの昼食(そこそこ美味しかった)。

地図を見ながら
BEINECKE LIBRARY(SOM)
へ向かう。
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あの黄色く光る大理石の実物が楽しみでした。
実は外観を見たことがなかったので、着いたときには真っ白い外観に
あれ?
と思ったのですが、内部に入るとオレンジ色に光る大理石の壁が。
そして中央には巨大なガラスボックスの中に本が並んだタワーがそびえています。
こんな空間、初めてでした。
こんなものあるのかー、と驚き、「ほえ~」と見上げていました。
人間のための空間というよりは、本のために捧げられた殿堂。あるいはモノリスの内部。
ソファに座って、本のタワーをしばし見上げる。
先人たちが積み上げた知恵と時間が「どうだ」と言わんばかりに迫ってくる。
これらの本はとても貴重な本で、そのためにガラスで閉じられ内部の空調で
維持されているそうです。
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そのままソファでちょっと昼寝。
この空間、一度体験してみる価値ありです。予想以上でした。

夕方、大学の内部や大学周辺のニューヘイブンの街を少しぶらぶら散策。
薄いオレンジ色の砂岩の印象。緑も多くて落ち着いた街。
来てよかったなあ、New Haven。

タクシーでホテルへ戻る。

by ogawa_audl | 2005-06-22 13:19


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