2004年 12月 16日
本日のスタジオの授業をもって、今学期の全日程が終了しました(大学は17日まで)。初ものづくしの最初の学期がなんとか無事終わろうとしています。この後は多くの人がクリスマス休暇で地元に帰るようです。プレッシャーからは開放されたのですが、急にやることがなくなって逆に落ち着かない・・。ということでいろいろ思い出しながら今学期を通して個人的に感じたことを書いてみようかと思います。いちおうreportということになってますしね。 9月末から授業が始まっておよそ2ヶ月半。最初の1ヶ月は大学のことに加えて生活全般に関してもどこになにがあるやらわからないことだらけで右往左往していたように思います。その後ようやく全体像がつかめてきてある程度落ち着いてきましたが(ひとつ上の学年に日本人の方がいらしたのでいろいろ教えていただきました)、相変わらず授業中の英語には苦労していました。各授業では課題等が結構出されたため、週末も時間に追われていたように思います。そうこうしているうちにミッドレビューがあり、そして気づけばファイナルレビューが近づいてくる・・といった感じでした。サンクスギビングの4連休が唯一休みらしい休みだったように思います。スタジオ以外にもイラストレーションのクラスで絵をいっぱい描かされたので、毎回その提出もなかなかハードでした(楽しかったですが。個人的にはウォーターカラーにはまりました。S.ホールの画集を眺めながら真似してみたり)。スタジオは少人数ということもあって、他の学生と仲良くなることができました。苦楽を共にしただけになおさらそうなのかもしれません。正直なところ、渡米前はアメリカに対するイメージはかなり悪かったのですが、いい人たちにたくさん出会えたことで、そのイメージは多少改善されました。おかしいのは一部の国のトップの方々であって、多くのアメリカの一般市民は親切でまともな人が多いのではないかと思います(特にシアトルは)。 ここからは項目別に簡単にまとめてみます。あくまで僕の感想なので一般解ではないかもしれませんのでご了承ください。 アメリカの大学と教育について いくつかのパターンがあるらしいのですが、ほかの大学のことはよく知らないので、UWのことについてですが、学部は1,2年は専攻を決めずに勉強し、3年から各専攻に分かれるらしいです。建築に入るには絵がある程度できないといけないとかきいたことがあります。学部4年で卒業後は、就職するか大学院に行くわけですが、日本に比べて働く人が多いようです。ストレートで大学院に来る人のほうがずっと少ないかもしれません。また、多くの大学院生は学部をほかの大学で卒業している人が多いようです。大学院では僕でさえ若い方の年齢だと思います。結婚している人とか、子持ちとか、長い間別の分野で働いていたひとなど、さなざまなひとが大学院生として一緒に学んでいます。建築教育のバックグラウンドがないひとには3年間のコースもあり、同じような授業をとります。いろいろな選択肢が用意されている国だと感じます。 1年間の授業の流れは、9月末に秋学期がはじまり、1月から冬学期、4月から春学期で、6月が卒業式シーズンといった感じです。夏はサマースクールで授業も取れますが、多くの人は長い夏休みでしょうか。各学期は2ヵ月半で、その期間に集中して何かを学び取る、という雰囲気です。短期間に集中的に学ぶため、課題なども多く忙しくなるのかもしれません。授業は選択してとるのですが、1学期に3つか4つくらいが平均的なようです。その代わり、各授業はだいたい週に2回以上はあるようです。 教職員は日本に比べて専門職にはっきりと分業されている印象です。1人の先生があれこれやるのではなく、それぞれの分野にそれぞれの専門家がいます。たとえば、パソコンのことはこの人に聞け!みたいな感じで。(その分人件費がすごそう、とか考えてしまいますが、学費を考えるとやや納得。) アメリカ人大学院生について さきほども述べましたが、さまざなな年齢のひとが集まっています。平均して多いのはやはり20代半ばから後半くらいなのですが、40代50代もそれほど珍しくないように感じます。ここでは働いてから大学に「戻る」という感覚のようです。そのため、学生が教授より年上だったりすることが当たり前のように生じています。日本で同様のことが起こるといろいろ難しそうですが、この国でこれを成り立たせているのは、言語を中心とする文化的背景ではないかと想像しています。ここでは年齢や立場に関係なくほぼタメ口でみんなファーストネイムで呼び合うため、年の差があっても気づけば友達感覚になっています。この辺は日本では無理だろうなあ、と思ってしまいます。また、そんな人たちが集まっているので、皆真面目に勉強に取り組んでいる印象を受けます。(でも逆に、中年のおっちゃんがまわりを笑わすために敢えてあほなことを平気でやってしまう一面があるのも事実。) UWの建築について アメリカ人の学生に言わせると、UWの建築は、アメリカの中ではエンジニアリングとアートの中間くらいらしいです。例えばもっとアート寄りの学校もあるように(サイアークとか)。デンマークから来た学生に言わせると、ものすごくエンジニアリング寄りだと感じるらしいです(彼の学校は国の芸術院に属するそうな)。そして神戸からきた僕の感想はというと、ややアートの匂いを感じます(でもものすごくアートという感じでもないですが)。その要因は、まず、工学部のなかの建築ではなくて、独立した建築都市計画学部であるということ。それから、授業のなかに、絵を学ぶクラスや写真を学ぶクラス、家具作りを学ぶクラスがあることがそう感じさせる要因ではないかと思います。またスタジオが広いのも理由のひとつかもしれません。しかし一方で、照明、材料、構造、事務所経営といった、実務的なクラスもあります。 この大学の現在の流行は、「環境」ではないかと思います。論文のテーマとか授業とか学生の話題などで、「サステナブル」「緑化」「ストローベル」などの言葉をよく耳にします。そのため、材料や工法にばかり意識が行っているような気が・・。同時に空間も考えたほうがいいとは思うのですが。 他のスタジオを含めて見たり聞いたりして発見したことは、ここでは手描き図面が半数ぐらいいるという事実。CADもつかえるけど敢えて手描きというひともいるようです(一方でAutoCADやFormZのクラスもありますが)。また、模型がほぼみんな茶色い。つまり白いスチレンボード(こちらでは同様のものをフォームコアと呼んでいます)の模型はほとんど見かけません。だいたいダンボールとかその他の茶色い厚紙か、木で作っています。それに開口部には窓を入れずにそのまま四角い穴だったりするのが当たり前のようです。別にスチレンボードが手に入らないわけではないのですが。その理由をある学生数人に尋ねたところ、「汚れやすいから」という答えが返ってきました。 シアトルの街について 雨が多いのは事実です。特に冬は。でも室内にいればあまり気になりませんし、緯度のわりにはかなり温暖だと思います。一日のうちでもたまに日が差したりするので、想像してたほど雨は気になりません。2、3日のサイクルで晴れた日もやってきます。 街の中心部は高層ビルが集まっていますが、その周辺は森と湖に囲まれた住宅地という風景です。全体的にあちこちに起伏がある街なので、車がないと身動きがとりずらい街かもしれません。 建築的にはやや保守的な印象で、奇抜なものや新しいものはそれほど多くないかなあと思います。有名どころを見ようと思ったら、OMAの図書館を見て、ホールのチャペルを見て、気が向いたらゲーリーのEMPを見るくらいしかないかもしれません(ホールのベルビューの美術館は建設にお金がかかりすぎてその後の経営が成り立たず閉鎖・・)。でも一方で、シアトルは芸術に理解がある土壌だとも聞いたことがあります。近々シアトルの街並みについては写真を含めて紹介しようと思います。
by ogawa_audl
| 2004-12-16 16:57
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