2009年 01月 12日
大学で建築について学び始めてから10年が過ぎました。 この10年で劇的に変わったなぁとしみじみ思います。 僕が大学に入ったばかりの90年代終わり頃は、明確なトレンドはなかったように思います。 磯崎新から続く「イズム」(藤森照信の言葉)や「バブル」や「システム」を引きずりながら、 方向性を模索していた時代だったように思います。 (不況なので、方向性を模索していたのはデザインだけではなかったのですが。) 卒業設計の年には9.11が起こり、形をつくることへの躊躇のようなものもあったような気がします。 それを大きく変えたのは、伊東豊雄と妹島和世ではなかったかと思います。 加えて隈研吾や青木淳。 (内藤廣はちょっと系統が違いますが、感性で惹かれていた同世代は多かった。僕も含めて) 彼らは、そういった混沌とした先の見えない状況において、 自己の感性を容認し、自身の作品においてそれを体現した(ように見えた)。 その下地があったから、現在では日本の建築デザイン界で若い感性が のびのびと自由に大爆発しているように思える。 デザインもそうであるけれど、彼ら若い世代が紡ぐ文章は詩的であり映像的でありやわらかい。 それはこの世代のブログなどで共通して感じられます。 以前に比べると、明らかなトレンドが見える。 身体に近い空間や、言葉でなく感性で理解する空間は、一般のユーザーにも 浸透しやすくなってきているのではないでしょうか。 あるいは逆に一般の若者と建築デザイン系の若者との間に、 ある感性が共有されていると見ることもできるのかもしれません。 (ここにはネットや携帯の文化の定着による同世代の感性の共有のようなものがあるのかもしれませんね) ガラパゴス化、パラダイス鎖国などと時に否定的にとられることもあるけれど、 それによって生まれる独自性も否定できない。 僕個人から見ると、海外との差異を生み出す日本独自のコンテンツがますます生まれようとしているようにも見える。 「新しさとは既に見たことあるものとの差異である」と仮に定義すると、 その意味で日本国内の若手建築家の間では海外から見て新しいものが どんどん生まれようとしているように見えなくもない。 そして大事なのは、そうやってつぎつぎに生まれてくる新しいものたちを 短期間で古いものにして国内だけで消費してしまうのではなく、 国内のあとは海外へと(あるいは内外同時に)それを発信してゆくことではないかと。 ある意味、「もったいない精神」なのですが。 (例えば、アメリカ人の間では、日本ではひと昔前に流行したバラエティ番組が言葉を超えてウケているし、 アニメも一部にはずっと人気があり、ユニクロや無印もカッコイイものとして捉えられている) こういった流れをスムーズにし出入り口を拡大するための施策や人材が求められるような気がするし、 誰もやらないのなら自分でやってみてもいいのかなぁとときどき思ったりもする。 日本は人が資源であり、そこから生み出されるアイデアやデザインももちろん重要な輸出資源だと思う。 建築や空間デザインの分野でも優れたものや作り手が多いように見える。 外からしばらく日本を見ていると、現代日本のデザインのユニークさがよくわかる。 やや供給過剰で過当競争になっているように見えるこの分野の国内マーケットを、 外へと拡大できないかなと考えています。 (関係ないけど大前研一氏の2009年の世界情勢についてのまとめ記事が面白かった。彼が望むような優れたリーダーを生み出す方法が知りたい)
by ogawa_audl
| 2009-01-12 12:30
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