2010年 01月 10日
日本らしさとグローバル化
毎日新聞の記事、特集ワイド:この国はどこへ行こうとしているのか 建築家・磯崎新さんで、
私が個人的経験とか空気からなんとなく感じていたことと、ほぼ同じことを磯崎氏が語っておられた。
自分の思考とか感性はそこそこ信頼してもいいかもなと思った。まぁ現実はそう簡単ではないのであるが。

以下抜粋
「僕はこの鎖国状態の期間を『和様化の時代』と呼んでいいと思います。
 歴史を見れば、和様化の時代は、輸入した海外の技術を徐々に日本化していく時期にあたります。
 今はこの和様化、つまり『日本化』を徹底する時期だと思いますね」

「日本には、海外でグローバルスタンダードを作ることができる外向きの人々と、
 国内で和様化を洗練する内向きの人々がいます。外向きの人々は企業でも個人でも、
 世界の一部分としてしか動けないから、どんどん海外へ行けばいい。
 日本にとって意義あることは、ダブルスタンダード、つまり役割を分担して外向きと内向きを
 ともに推し進めることだと思います」


ここからは私の勝手な考え。
国土交通省に観光庁という機関が数年前に出来た。
簡単に言ってしまえば、海外から日本にやってくる外国人観光客にお金を落としていただこう、というものだと思う。
日本のイタリア化、ポルトガル化などと言われる昨今、選択肢のひとつではあると思う。
実際、私の周りの外国人の友人たち(アメリカ、インド、ドイツ、チェコ、台湾、ベルギー、ハンガリー)は、ほぼ100%の割合で、
日本へいつか行ってみたい、もう一度行ってみたい、と言っている。

では海外からの観光客は、何を体験しに来るのか?
それは、インターネットなどでは得られない、生身の物理的な体験だろう。
つまり、日本の文化、人、食、自然、街、建築など。

ここで、和様化、日本らしさという観点から、建築と街について考えてみる。

まずいわゆる「和」のデザインというものがある。
ほかの国では見られない、あるいは成立しえない、日本独自のデザイン。
現代の都市は、高密化による高層化が進んでいる。
当然背の高いビルディングが生まれているわけだけど、
これぞ「和」のデザイン、といえるような高層建築にはなかなかお目にかかれない。
ディテールの洗練や清潔さなどは日本独自のものと言えるが、大まかなデザインはアメリカの都市で見られるビルと大差ない。
シンプルなガラスの箱。

菊竹清訓氏の講演をまとめた文章をネットで見つけた。
「建築領域から観た日本文化の存在感」(2003年)
(世界の建築デザインの歴史的な流れを独自の視点で書いていてなかなか面白いので興味があれば読んでみてください。日本の建築業界の海外戦略などについても)
それによると、そのガラスの箱の祖でもあるミースは、醍醐寺の書院を真似てつくったらしい。
となると、アメリカのガラスのビルは、実は日本のデザインがアメリカを既に席巻した状態で、
それが日本へと戻ってきたとも考えられなくもない。
でもやっぱり、同じようなものが世界のどこでも見られるようになってしまうと、
日本独自のものとは言いにくい。

和の建築をイメージさせるのに最も有効なのは、屋根だと個人的に考えているのだが、
それをうまく高層建築のデザインに融合させているものは少ない。
数少ない例としては、古いものではホテル・エンパイア(大林組)、最近では浅草文化観光センター(隈研吾)などが思い浮かぶ。
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一方で、いわゆる「和」のイメージ以外でも、日本のイメージが形成されつつある。
これは外国人の友人たちのうち、全員ではないが多くの割合で、現代の東京も楽しんでいるということ。
高密で、人が多くてにぎやかで、いろんな店があって、夜も派手なネオンやイルミネーションがあって、クレイジーで、という部分を。
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これもまた新しい日本らしさなのかもしれないので、過去へと戻るだけではなく、
新しいカタチをつくってそれがいずれ歴史・文化の一部となっていく、というものなのかもしれない。
でもこの場合の「よさ」は、何をどう戦略化して都市をデザインしてゆくか、というところを明確にできていない気がする。
また、東京のように高密化した都市は途上国を中心にこれからどんどん発生してくるので、
そことの違いはなんだろうかと考えたりもする。

意識して考えなくても、結果的に生まれてきたものが、新たな日本的なものなのかもしれないけれど、
丹下健三氏や菊竹清訓氏が取り組んだように、もう一度意識して、日本独自のデザインについて考えてもいいんじゃないかと思う。
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by ogawa_audl | 2010-01-10 08:39


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