2009年 05月 17日
2晩続けてのレクチャーを聴きにUWへ。 講演者は、東京から来られた田島則行氏と、北京から来られたUW出身のMary Anne Ray氏。 第一夜は、どちらも都市レベルの話。 リサーチや提案などをグラフィックや写真を交えて。 田島氏は東京を舞台に。 Mary Anneは北京のCaochangdiという違法居住者が集まっていたところがアートの中心になった エリアを中心に。 東京の川の話で、現在の水源がある意味で、人間ひとりひとりである、という指摘がなるほどなと。 生活に使う水道水・飲み水 → 人間 → 下水 → 浄化 → 川へ ということで。 資源が都市にミクロに分散しているという点で、「都市鉱山」の話にも似ているなと思いました。 Caochangdiの話で面白かったのは、中国人のコピー精神の話。 このエリアには、’鳥の巣’でH&deMとも協働し中国でオピニオンリーダーの一人にもなっている 芸術家のAi Weiwei氏がアトリエを持っているのですが、 彼が作ったレンガ造りのシンプルな建築が、その周辺でどんどんコピーされていっている。 オリジナルのコピー、そのコピーのコピー、それの更なるコピー、と繰り返されているうちに、 ディテールなどがちょっとずついい加減になっていっているらしいので、オリジナルとの違いはわかるらしい。 これを聴いていて面白いなと思ったのは、中国人は「いいものであるらしい」と一度価値を認められたものを どんどん気軽にコピーしていってしまうというところ。 それによって、計画的ではないのに、統一された町並みが出来ていくのではないかと思いました。 日本やアメリカだと、お隣さんとまったく同じデザインなんて、嫌だから、別のものにしたい、という気持ちが働く気がします。 つまり、個人の好みとか個性というものを前面に出していく。 町並みに統一感を出そうと思ったら、行政が景観デザイン上のルールなどを強制させる必要がある。 この違いはなぜに?と考えるのが面白いかもしれないし、先進国での景観の作り方でのヒントも得られるかもしれない。 第二夜は建築作品の話。 両氏に共通して感じたのは、巨大な’外から見るオブジェとしての’建築というよりは、 空間における身体から生まれるような建築や家具の作品。 建築の規模が大きくなったとしても、そういった空間体験の集合体としての建築となっている。 田島さんのスライドの中で、Bird Eye/Real Eyeというのが出てきました。 地図と現実の空間の両方を行ったり来たり、という話でしたが、鳥の目・アリの目に近いですね。 人口密度がある点を越えると、街を歩いているときの情報認識ががらりと変わるという指摘も興味深かったです。 密度が低いと、向こうからやってくる人の顔だったり、周辺の景色だったりを認識できる。 けれど高密度になりすぎると、まわりのひとの顔などのディテールは認識できなくなり、抽象的なものへと 変わっていく。 レクチャーが終わってから、田島さんと少しだけお話してみました。 東京キャナルのリサーチや提案が面白かったのですが、そこから浮かんだ疑問について。 それは、田島さんも含めて、さまざまな優れたリサーチや提案が日本の都市を対象として 生み出されているのに、現実のプロジェクトとしてなかなかそれが活かされている例を見ない。 アメリカやヨーロッパではそういったプロジェクトがすぐに実現へ向けて動いていたりコンペになったりするのに なぜ日本ではそれが起こらないのか? 田島さんのお答えによると、 日本では限られた一部の人たちだけが、そこを動かしているから、ということでした。 では限られた一部の人たちとは? それは、企業やアカデミズムのトップの人たち。そして共通してかなり上の世代。 若い世代がそこを目指しても、数十年かかってしまう。 うーん、昭和的というか官僚的というか。 でも、このようにも仰っていました。 その世代がそろって引退する日が近いうちに来るから、そのときに何か起こるかもしれないね、と。 例えば、横浜の米軍跡地のコンペが、これまでに日本であまり見なかったような企画で面白いなと思うのですが、 ひょっとすると若い中田宏横浜市長による判断もあるのかな、と想像します。 田島さんにはシアトルを気に入っていただけたようです。 今日(土曜)はケン・オオシマさんの案内で建築を見て回るそうです。 天気もすこぶるいいですし、楽しんでいただけるのではないかと思います。
by ogawa_audl
| 2009-05-17 05:27
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